治療院経営の1と1と1

 

 

 

いきなり『治療院経営の1と1と1』のタイトルを見ても、正直、意味が分からないはずです。1と1と1の意味を説明すると、それぞれ

 

 

*集客の最小単位としての1

 

*幻想としての1

 

*1点突破の1

 

 

の意味となります。上で紹介した3つの1は、治療院から色々、集客全般に関する相談を受ける中で、気付いたことです。

 

では、これから3つの1の意味について、解説していきます。

まず、整体、カイロ、鍼など業種を問わず、私が治療院の集客で最も危険な傾向として捉えているのが、院長が、上記の

 

 

「集客の最小単位としての1」

 

 

という考えを軽視するようになることです。

代わりに、院長が今週のお客さんのトータルは、合計○人、今月のお客さんのトータルは計○○人など、1週間、1ヶ月など特定の範囲内での大きな

塊としてしか、お客様を認識しなくなります。

 

これは治療院経営で、非常に危険なシグナルであり、サッカーに例えれば

イエローカードと同種と言えます。

なぜなら、全てのビジネスで共通することですが、集客/商売とは、最小単位である「1人」のお客様の集積なのに、単なる全体の塊として認識するようになると、次第に、治療院のサービスの質が低下し、顧客満足がどんどん下がっていくからです。

 

特に、治療院の場合は、お客様から見て、

 

 

「直接、自分の体に触れられる」

 

 

という業種の特徴から、同じ店舗型ビジネスでも、飲食店などと比べた場合、来店までの心理的ハードルが、高いのが特徴です。

 

私自身がお客として、来店した治療院の例でも、過去に何のためらいもなく、来店できたケースはありません。

やはり、事前に、その駅前で治療院が営業していることを確かめて、看板にあるチラシも取って、値段や施術の種類をチェックしてと、ある程度、情報を得てから来店します。

それでも、最初は心臓がドキドキするし、入った後も、しばらくは緊張しています。

 

このように、たった1人のお客が来店するまでには、これだけの葛藤があるのに、院長がそれらのプロセスを考慮せずに、単なる全体の塊として考えるようになると、お客から見て、理解できないサービスを始めるようになります。

 

例えば、ある治療院では、オープン後、すぐに、なぜか施術後に、無料で

サービスしているお茶の通信販売を始めようとしました。

他にも、今月はお客さんの来店数が先月より、3割位減っているから、来月にまた新規客の割引きサービスを復活させようなど、一貫性のない、思いつきのサービスをするようになります。

 

ところで、「集客の最小単位の1」という考えは、別に私の個人的な意見で

は、ありません。

世界一のコーヒーチェーン「スターバックスコーヒー」の創業者ハワード

シュルツも、「集客の最小単位の1」を軽視するようになる危険性を、著書の「スターバックス再生物語(徳間書店)」の128頁で、このように述べて

います。

 

「お客様を100万人、店舗を1000店という単位でとらえるだけで、お客様ひとり、パートナーひとり、コーヒー一杯について考えていなかった。

このような傲慢な考え方をしていると、知らぬ間に小さな、危険なものが忍び込んでくる」

 

この言葉は、世界一のコーヒーチェーンの創業者にしては、かなり大げさに聞こえます。

現実には、日本ではほとんど報道されませんでしたが、アメリカのスターバックスは、2008年のサブプライムローン問題の頃は、経営的に減収減益

でした。

具体的には、

 

・2008年4月末の世界全体での営業利益は26%減少

 

・2008年の既存店売上高が、スターバックス史上初めて、前年比マイナス

 を記録

 

・2008年7月に、アメリカのスターバックス600店舗の閉店を決定

 

 

(※出典は全てスターバックス再生物語から)

 

だった程です。

 

これらの事実を知った上で、再度、ハワードシュルツのコメントを読むと

改めて、「集客の最小単位の1」を軽視するようになる怖さが分かります。

もちろん、言うまでもなく、昨年度の全体の来客数、来客数の中での新規客、既存客の比率、或いは前年度と比較した場合の今年1月、2月の月別の

合計来店数などを比較するなどの数字のチェックは必要となります。

それでも、これらの数字分析も、「集客の最小単位の1」を理解した上で、

行うのが大前提となります。

 

次に、怖いなと感じるのが、集客で「幻想としての1」の考えにしがみついている所が多いことです。

幻想としての1とは、フリーペーパーの広告、チラシポスティング、HP、

ニュースレター、小冊子など、どれか1つのツールにお金を掛ければ、お客様が増えると考えていることです。

 

これは幻想であり、多くの集客手段の中から、1つだけ選べばそれでお客様

が、口コミなどで自然と増えてくることなど、現在は、あり得ないことです。現実的には、その治療院の客層、地域の特性、予算の限界などを考慮して、HP、ニュースレター、小冊子、チラシなど、多くの媒体を組み合わせて、複合的に使っていくのが正解です。

たまに、

 

 

「ニュースレターを発行すれば、お客さんは増えるの?」

 

 

など、1つのツールだけで効果を出すことを期待している甘い考えの院長も

いますが、たった1つのツールのみで、すぐに集客効果がでると考えるのは

根拠もなく楽観的すぎます。

 

この点に関しても、スターバックス創業者のハワードシュルツが、本の中で、下記のような鋭い意見を述べています。

 

「一つの戦略、一つの商品、一つの販売促進活動、一人の人間が会社を救うのではない。たくさんのことがうまくいかなければだめなのだ(同書217頁)」

 

 

最後の1が矛盾しているように思えますが、1点突破の1です。

1点突破の1の意味を解説する前に、私が、この考えに至ったプロセスを先に紹介させてください。

私が、集客が上手くいってない治療院を見て思うのが、一種の思考停止状態に陥っていることです。

思考停止とは、文字通り、集客方法を考え実行することを放棄するようになり、

 

 

「自然と、口コミでお客さんが増えないかな」

 

 

と、具体的に何の努力もせず、ただお客が来るのを待つだけになる状態です。なぜ、こんな思考状態になるかと言うと、皮肉にも集客の為の選択肢が、増えすぎているのが原因でしょう。

ネットが普及する前は、治療院の集客は、タウンページの広告、チラシぐらいしかありませんでした。

 

現在は、HP、ブログ、ツイッター、You-tube、フリーペーパー、ニュースレター、小冊子、フェイスブックなどのSNSと、毎年、新しい集客ツールが

生まれているような状況です。

更に、事態を複雑にしているのは、特にネット系の新しいツールなども、

きちんと原理を理解し、上手に活用できれば、それなりの集客効果を出せる場合もあるので、どれも正解と言える状況になっていることです。

 

私自身も、最近、実験的にフェイスブックを始めましたが、フェイスブックはMixiと違って、全て実名なので、ビジネス的な可能性が感じられるツールです。

ところが、集客ツールが増えすぎてしまったことで、逆に、どのツールを

選んでいけば良いのかが判断出来なくなり、結果、どれも試さなくなり思考停止状態になる院長は、意外と多いです。

 

この思考停止状態を打破する為に必要な考えが、1点突破法です。

1点突破法とは、HP、ブログ、チラシなど、集客上、必要な最低限の幾つかのツールも持ちながら、合わせて、自分が一番得意な分野での集客ツールに集中することです。

 

例えば、元々、文章を書くのがそれ程、苦にならない院長もいます。

そのような人は、ブログ、ニュースレター、小冊子など「書く」ことを軸

として、それぞれの集客ツールを展開させます。

あるいは、コンピューターにも詳しく、自分で、それなりのHPを作成できる院長もいます。

このタイプでしたら、HPを切り口として、写真や動画も加えて、そこから

集客をスタートさせます。

 

あるいは、私から見て、デザイン的な才能があり、自分でパソコンを使って、視覚的にきれいなチラシを作れる院長もいました。

この場合は、デザインを軸にして、毎回チラシを改良させていく方向から

集客をスタートさせます。

 

これらの例のように、他の人は苦手だけど、自分は普通に出来る分野に限った集客ツールを使って「1点突破」していくのは、思考停止状態から抜け出す為にも、効果的な集客方法です。