マネーボールから学ぶ4種類の小冊子活用法

 

 

 

『マネーボール(ランダムハウス講談社)』という本のタイトルは、

本を読んでない人でも、聞いたことはあると思います。

 

この本は、日本でもイチローの所属するシアトルマリナーズと同じ、

アリーグ西地区のオークランドアスレチックスのGMビリービーンについて

の物語です。

このチームは、選手に盗塁をさせない、大卒の選手しか取らないなど、

幾つかユニークな方針を持っていることで有名です。

 

実は、これらの非常識なチーム戦略は、ビルジェームズという野球ファン

が1977年に作成した、たった68ページの小冊子から始まっていた!ことが

本に書かれており、驚いてしまいました。

そのビルジェームズが、1977年に初めて新聞に広告を掲載し販売を始めた

小冊子には、いくつもの小冊子活用法のヒントが隠されていますので、

下記に、要約して解説していきたいと思います。

 

 

■合計4種類の小冊子活用法

 

 

下記に、マネーボールを読んで気付いた4種類の小冊子活用法を

取り上げます。

 

1) 超ニッチマーケットを狙う

 

2) 読者に問題提起をする

 

3) 毎年のシリーズ化

 

4) 読者との定期的な交流(Q&A)

 

では、下記に1〜4の解説を載せていきます。

 

1)超ニッチマーケットを狙う

 

解説)

 

野球はアメリカ人には、一種の国技なので、当然、ニッチマーケットでは

ありません。

ただし、この本では、野球の中でも、かなりニッチなトピックだけに焦点

を当てています。

一例を挙げると、

『審判団は試合時間にどのくらい影響を与えるのか』などです。

 

野球という人気のあるスポーツでも、審判が試合時間に与える影響を気に

するファンは、一体、どれ程いるのでしょうか?

上記のように、ニッチなトピックのみ取り上げ、構成したのが、彼の小冊子の特徴です。

 

2)読者に問題提起をする

 

解説)

 

この小冊子で、最もユニークな点は、読者に問題提起をし、今までの野球

の常識に対して、鋭い異論を展開している点です。

 

例として、エラーの記録について、彼は、問題提起をしています。

仮に、選手がボールを取ろうと懸命に走り込んで、その結果、取れなかった場合、積極的なプレーにも関わらず『エラー1』と記録されます。

 

逆に、最初から選手が消極的で、無理目のボールを追わずにヒットになった場合は、当然エラーはカウントされません。

 

こういった矛盾に対して、

 

『守備に関するデータは、数学としては存在意義があっても、言語としては意味がない』

と鋭く批判しています。

上記のようなユニークな問題提起をし、読者1人、1人の思考を刺激する

という姿勢は、小冊子作成において有効な手法でしょう。

 

 

3)毎年のシリーズ化

 

解説)

 

初めての小冊子で、75部注文があったことに、気をよくしたジェームズは、翌年度に、第2号を販売します。

第2号は、倍以上の250部の注文があり、以後9年間、毎年、小冊子の販売

を続けます。

最終的には、何と1982年に、ニューヨークの出版社が『野球抄』を販売し

この本は、ベストセラーにまでなったそうです。

この事実からも、毎年のシリーズ化が成功のカギだと分かります。

 

 

4)読者との交流(Q&A)

 

解説)

 

ビルジェームズという男は、大変筆まめな人物だったようで、読者からの

質問の手紙には、1件、1件丁寧に回答していたそうです。

結果、読者とのやり取りを重ねる内に、野球のデータ研究を重ねる『アメリカ野球研究協会』という組織まで、立ち上げてしまいました(因みに、

2002年現在で、会員は約7000人もいるそうです)。

 

小冊子を読んだ読者とのまめな交流も、小冊子作成後のヒントとなりそう

です。

 

ところで、ビルジェームズという人物は、一種の変人だったようで、将来

メジャーリーグの何球団かは、自分にコンタクトを取り、彼が小冊子で説いた新しい野球データを採用するようになると、本気で信じていたようです。

 

これは、いくら何でも誇大妄想でしょう。メジャーの球団が、一野球ファンのデータを元にした戦法を、シーズンで取り入れることなど、想像出来ません。ところが、彼の夢は、驚くべきことに、最終的には、違った形で

実現しました。

 

オークランドアスレチックスのGMビリービーンは、ビルジェームズの小冊子の愛読者で、1997年のGM就任前に、既に、全12冊の小冊子を読破してい

ました。

小冊子を読んで感銘を受けたビリービーンGMは、自分なりの『選手に盗塁をさせない』などのユニークな考え方もミックスして、チーム編成を行い

ました。

 

つまり、ビルジェームズという1人の野球ファンが、1977年に作成した68

ページの小冊子は、20年の時を経て、本当に、メジャーの1チームの戦略まで変えてしまいました。

何と、恐るべき小冊子の力でしょう(余談ですが、チームは2001年に102勝

、2002年に103勝と、2年連続で100勝以上を達成しました)。