数字の裏に隠されたお客様ストーリーを読む

 

 

 

以前、都内で治療院を経営の院長と面談したことがありますが、治療院の

集客支援という視点で、実に興味深いものでした。

 

なぜなら、その方は、自店の来店数、売り上げなどのデータを、毎年、

詳細に取っており、去年との数字の比較をし、様々な仮説をたて、治療院

経営に役立てていたからです。

自店のデータ分析は、多くの院長が重要なことと認識していながら、実際は、中々、本格的に取り組めていないところが、多いのではないかと思います。

 

そこで、私が商談時に資料として頂いた、ある治療院のデータを一つのケーススタディとして、数字の裏に隠されたお客様ストーリーを分析していきたいと思います。

 

 

1)時間軸

 

そこの治療院の営業時間は、朝10:00から、夜22:00までです。

その店では、実際に、朝10:00から、夜22:00まで、1時間単位での、来客数、売り上げ額のデータを取っていました。

 

そこで、面白かったのが、その店では、なぜか、夕方16:00から17:00までの来客数、売上額が一番多く、この傾向は一年間で共通していました。

更に、去年のデータも比較してみたのですが、やはり去年も同じで、夕方

16:00からの1時間の来客数、売り上げが一番でした。

 

この数字から、分かるストーリーは何か?

仮に、私が、その店の経営者だったら、まず顧客属性を分析します。

例えば、夕方16:00頃に来店する顧客層で、一番多いのがサラリーマンだったとしたら、そのグループは、外回りの営業マンではないか?と推測できます。

つまり、朝から顧客回りをしていた営業マンが、夕方会社に、外回りから戻る前に、実は、会社に内緒で、こっそり施術を受けにきているのではないか?と想像できます。

 

この仮説が、浮かんだら、店の集客方法も、それに合ったプランに変更します。例えば、店の来客スペースに、プレジデント、週間ダイヤモンドなどの雑誌や営業関連の書籍を揃えます。

或いは、自店のスタッフに、元営業マンを雇うのも良いかもしれません。

また、店の周辺の会社に定期的に、チラシのポスティングをするのも効果的かもしれません。

 

前者は、顧客属性がサラリーマンだった場合ですが、逆のケースでは、どうでしょうか?

例えば、夕方16:00から17:00までの顧客属性で、一番多かったのが主婦

のグループだったとします。

この場合、スーパーで買い物に行き、今晩の夕食を用意する前にちょっとした休憩として、治療院を利用している仮説が浮かびます。

 

このケースでは、シフト変更して、夕方の時間帯のみ、可能ならば、全員女性スタッフにする、或いは、夕方16:00から17:00の間だけの割引き価格などを用意して、周辺の家庭にチラシをポスティングするのも面白いと思います。

 

 

2)曜日軸

 

その治療院では、曜日ごとの1年間の売り上げデータも取っていました。

そこは、土日も営業日で、代わりに毎週火曜日が定休日でした。

土日の売り上げデータが、一週間の中で、一番高いのは、納得できます。

不思議なのは、平日のうち、なぜか水曜日の売り上げが、毎週、月、木、金と比較した場合、5〜10万円ほど、高いことです。

 

この点に関しては、2つの推理ができます。

1つ目は、単純に、毎週火曜日が休みなので、その反動として、水曜日の売り上げが、他の平日より増えるだけなのか。

2つ目は、水曜日という一週間の真ん中で、売り上げが増えるのは、やはり

明確な理由があるのか?ということです。

 

例えば、同じように、過去1年間の水曜日の顧客グループを分析してみて、

一番多いグループが、営業マンのグループだったとします。

 

この場合、週の真ん中の水曜日で、ちょっと、一息つく為に、自分の体の

ケアメンテナンスとして、治療院に行くという心理が働いているのではないか?と推測できます。

 

 

3)スタッフの性別

 

最後に、自店でスタッフを雇用している場合は、スタッフの性別も意外と

重要な要素となります。

私が、この点に気付いたのはその店のスタッフデータを見ていた時です。

 

ある女性スタッフのデータを見ると、女性のお客様に対する2回目以降のリピート率は、53%でした。

次に、男性のお客様のリピート率を見ると、この数字が極端に下がり、36%と17%も低い数字になっています。

 

一般的には、女性スタッフだったら、男性のお客様のリピート率は、高くなるのでは?と思い、別の女性スタッフのデータを見てみました。

予想通り、その女性スタッフは、女性のお客様のリピート率58%に対して

男性のお客様のリピート率は、66%でした。

 

2人のスタッフのデータから分かることは、何でしょうか?

一つ、はっきりしているのは、最初の女性スタッフは、男性のお客様のリピート率が、極端に低いので、このスタッフのお客様は、女性限定にした方が良いことです。

 

なぜ、この女性スタッフは、男性のリピート率が低いのか?

幾つか仮説が考えられますが、もしかしたら、この女性の施術は、あまりにもソフトすぎて、その店に来る男性のお客様には、物足りないからかも

しれません。

或いは、この女性スタッフに、過去に何か男性に関して、トラウマになることがあり、本能的に、男性のお客様に施術することに嫌悪感をいだいている可能性もあります。

 

理由は、何であれ、店側としては、売り上げを逃さない為にも、スタッフのリピート率を見て、お客様の性別を限定することも必要な対策となります。

 

ところで、上記は、「将来の売り上げを逃さない」という消極的な集客対策でしたが、もっと、積極的に、これの逆バージョンも考えられます。

 

つまり、男性スタッフの女性のお客様のリピート率を調べることです。

普通は、女性のお客様は、セクハラの問題もあり、男性スタッフよりは、

女性スタッフの施術を望むものです。

 

予想通り、男性スタッフのリピート率を見ると、男性のお客様=71%に対して、女性のお客様=62%と、女性のお客様のリピート率は、軒並み低く

なっています。

ところが、その中で、1人だけ例外のスタッフがいて、男性のリピート率=

52%に対して、女性のリピート率=60%と、女性のお客様のリピート率が

8%も高くなっています。

 

ここで、店の経営者として、取るべき次のアクションは、何か?

真っ先に、考えることは、この男性スタッフが女性のお客様に好かれる要因は何か?を分析して、成功要因を全スタッフの間で、共有できるか?を

調べることです。

 

例えば、この男性スタッフは、技術うんぬんでなく、施術前、施術中、施術後などに、お客様に、話しかける何気ない言葉が受けて、高いリピート率に貢献していることが分かったとします。

この場合、スタッフの女性のお客様にかける言葉を、全スタッフで共通のものにするなどです。

 

以上、時間/曜日/性別と、3つの事例で、お客様ストーリーを分析してみました。

自分の治療院でも、一度、過去のデータを、全部分析して、背後のストーリーを予想してみてください。